トラックのブレーキチャンバー|しくみと不具合のサイン、点検のしかたと交換時期(サービス側・スプリング側)
この記事のポイント
- ブレーキチャンバーは、エアの力でブレーキを動かす部品。走るときに使うサービスブレーキ側と、駐車ブレーキのスプリングブレーキ側があります。
- ゴム部品が劣化すると、エア漏れや戻り不良が起き、ブレーキの引きずりから火災に至ることも。日野は交換時期をサービス側2年・スプリング側3年としています。
- 定期点検では、ロッドのストロークと、石けん水でのエア漏れ、ロッドの戻りを確かめます。
大型・中型のトラックやバスの多くは、圧縮した空気(エア)の力でブレーキをかけます。そのとき、エアの力を機械の動きに変えてブレーキを動かしているのが「ブレーキチャンバー」です。車輪のすぐ近くにあって、泥や水をかぶりやすいうえ、中のゴム部品は年数とともに劣化します。この記事では、国土交通省の点検の手引と注意喚起、日野自動車の整備情報をもとに、ブレーキチャンバーのしくみ、不具合のサイン、点検のしかたと交換時期をまとめました。
ブレーキチャンバーのしくみ
エアでブレーキをかける車(フルエアーブレーキの車)では、ブレーキペダルを踏むと、エアタンクにためた圧縮空気がバルブを通ってブレーキチャンバーに送られます。チャンバーの中のゴムの膜(ダイヤフラム)が空気に押されてロッドを押し出し、その動きでブレーキがかかります。
多くの車の後輪などには、2つの部屋が一体になったブレーキチャンバーが付いています。
| 部分 | 役目 |
|---|---|
| サービスブレーキ側 | 走っているときのブレーキ(フットブレーキ)。ペダルを踏むとエアが入ってブレーキがかかる |
| スプリングブレーキ側 | 駐車ブレーキなど。中の強いばね(スプリング)の力でブレーキをかけ、エアの力でばねを縮めてブレーキを解除する |
スプリングブレーキ側は、エアが抜けるとばねの力でブレーキがかかる作りです。そのため、エア漏れや部品の傷みがあると、走っている途中でもブレーキが完全に戻らない(引きずる)ことがあります。
不具合のサインと引きずりの怖さ
日野は、ブレーキ部品のゴム部品を長く使い続けると、ゴムが劣化・膨潤して、ピストンの戻り不良やエア漏れが起き、ブレーキの作動不良や引きずりを起こして、最悪の場合、事故や火災に至るとしています。ブレーキペダルから足を離しても、ずっとペダルを踏んでいるのと同じ状態になってしまうのです。
国土交通省も、トレーラで、スプリングブレーキチャンバーの不良(エア漏れ、戻り不良、内部のスプリングの錆や損傷)などによりブレーキが引きずり、火災に至ることがあると注意を呼びかけています。走っている間は炎が見えなくても、停めたあとに燃え出すことがあります。
次のようなことがあれば、ブレーキチャンバーやバルブなどの不具合を疑い、早めに点検を受けてください。
- ブレーキチャンバーのあたりから、エアが漏れる「シュー」という音がする
- ブレーキペダルを離しても、ブレーキがかかったような感じが残る
- 走ったあと、ホイールのあたりが異常に熱い、焦げたにおいがする
- ブレーキの警報ランプが点き、エンジンの力が落ちたように感じる、惰性で走っているときにブレーキがかかったように感じる(日野は、このようなときは速やかに運行を止めて点検を受けるよう案内しています)
また、運行の前には、駐車ブレーキが確実に解除されていることを確かめましょう(国土交通省)。
交換時期のブレーキチャンバー、お探しします
車検証の写真(または車台番号)と、前輪・後輪などの場所を教えてください。お使いの車に合うブレーキチャンバーやバルブ類をお調べします。
点検のしかた
国土交通省の「自動車の点検及び整備に関する手引」では、エアブレーキの車のブレーキチャンバーについて、定期点検で次のことを確かめるよう定めています(点検の時期は、事業用・自家用などの区分によって違います)。
| 点検の項目 | やり方 |
|---|---|
| ロッドのストローク(事業用の車は3か月ごと) | 規定の空気圧の状態で、補助の人にブレーキペダルをいっぱいに踏み込んでもらい、ロッドの動いた長さが規定の範囲にあるかをスケールなどで測る |
| エア漏れ(事業用の車は12か月ごと) | ペダルをいっぱいに踏み込んだ状態で、チャンバーのクランプのまわりに石けん水などを塗り、泡が出ないか(エアが漏れていないか)を見る |
| ロッドの戻り(事業用の車は12か月ごと) | ペダルを戻したときに、チャンバーのロッドがきちんと戻るかを見る |
| 分解しての点検(必要なとき) | チャンバーを分解し、ダイヤフラム、スプリング、ゴム部品などに傷みや劣化がないかを見る |
ロッドのストロークは、ブレーキのライニング(摩擦材)がすり減ったり、調整がずれたりすると大きくなります。ストロークが大きすぎると、ペダルを踏んでもブレーキが十分にききません。規定の範囲は車種によって違うので、整備書で確かめてください。
また、日常点検(運行前の点検)では、ブレーキペダルの踏みしろやききぐあい、エアタンクにたまった水(ドレンコックを開いて確認)を確かめます。
交換時期の目安
日野は、ブレーキ関係のゴム部品は、メンテナンスノートに書かれたとおり定期的に交換するよう求めています。日野の整備情報が示す、フルエアーブレーキの車(EBSなしの車)の交換時期は次のとおりです。
| 部品 | 交換時期 |
|---|---|
| ブレーキバルブ・リレーバルブ・ABSコントロールバルブ | 2年 |
| ブレーキチャンバー(サービスブレーキ側) | 2年 |
| ブレーキチャンバー(スプリングブレーキ側) | 3年(分解しない部品のためアッセンブリで交換) |
| エキスパンダー(ダストブーツ部は1年) | 3年 |
EBS(電子制御のブレーキ)付きの車でも、ブレーキチャンバーはサービスブレーキ側が2年、スプリングブレーキ側が3年です。車種や年式によって部品や交換時期が違うことがあるので、必ずお使いの車のメンテナンスノートや整備解説書で確かめてください。
トレーラの場合は、トレーラを作ったメーカーの整備要領に従って、劣化するゴム部品などを定期的に交換します(国土交通省)。
エアタンクとエアドライヤーも一緒に
ブレーキに送る空気に水分が多いと、バルブやチャンバーの中の錆や、冬の凍結の原因になります。国土交通省は、冬はエアタンク、エアドライヤー、リレーエマージェンシーバルブなどの水分を点検して取り除き、エアドライヤーの乾燥剤とフィルターを定期的に交換するよう呼びかけています。エアドライヤーの交換のサインはトラックでよく交換する部品の記事にまとめています。
トラックヒーローを運営する小林商会は、バス・トラック部品の専門商社です。品番がわからなくても、車検証の写真(または車台番号)があれば、ブレーキチャンバーやリレーバルブ、エアドライヤーなど、お使いの車に合う部品をお調べします。
参考にした資料
- 国土交通省「自動車の点検及び整備に関する手引」(令和7年7月8日最終改正) https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/images/t_tebiki.pdf
- 国土交通省「トレーラのブレーキ引き摺りによる火災にご注意!」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/carinf/rcl/carsafety_sub/carsafety020.html
- 日野自動車「ブレーキのゴム部品を長期使用すると事故や火災に至ることがありますので必ず定期交換していただけるようお願い致します」(整備情報 No.20220411) https://www.hino.co.jp/ts/vehicle_maintenance/pdf/20220411.pdf
よくある質問
- Q. ブレーキチャンバーの交換時期はいつですか?
- A. 車種や年式で違います。日野の整備情報では、フルエアーブレーキの車のゴム部品の交換時期として、ブレーキチャンバーのサービスブレーキ側を2年、スプリングブレーキ側を3年としています。スプリングブレーキ側は分解しない部品なので、アッセンブリ(丸ごと)で交換します。必ずお使いの車のメンテナンスノートで確かめてください。
- Q. ブレーキチャンバーからエアが漏れる音がします。
- A. 国土交通省の点検の手引では、ブレーキペダルをいっぱいに踏み込んだ状態で、チャンバーのクランプのまわりに石けん水などを塗って、エア漏れがないかを確かめます。漏れていればダイヤフラムなどのゴム部品の劣化が考えられます。ブレーキのききに関わるので、早めに整備工場で点検を受けてください。
- Q. ブレーキの引きずりはなぜ危ないのですか?
- A. ブレーキがかかったまま走ることになり、ブレーキが過熱して、最悪の場合は火災に至ります。日野は、ゴム部品を交換せずに長く使うとピストンが元の位置に戻らず引きずりが起きるとしています。国土交通省も、スプリングブレーキチャンバーのエア漏れや戻り不良、内部のスプリングの錆や損傷によるトレーラの火災に注意を呼びかけています。
- Q. ロッドのストロークはどう点検しますか?
- A. 規定の空気圧の状態で、補助の人にブレーキペダルをいっぱいに踏み込んでもらい、ブレーキチャンバーのロッドの動いた長さ(ストローク)が規定の範囲にあるかをスケールなどで測ります。国土交通省の手引では、定期点検の項目になっています。規定の範囲は車種によって違うので、整備書で確かめてください。
- Q. エアタンクの水抜きもブレーキに関係ありますか?
- A. 関係があります。エアタンクにたまった水は、日常点検でドレンコックを開いて確かめる項目です。国土交通省は、冬はエアタンクやエアドライヤーの水分を点検して取り除き、エアドライヤーの乾燥剤やフィルターも定期的に交換するよう呼びかけています。
ブレーキチャンバー、バルブ類の部品もお探しします
ブレーキチャンバーやリレーバルブなど、交換時期が来た部品や車検・点検で指摘された部品を、車検証の写真(または車台番号)からお使いの車に合うものをお調べしてご連絡します。
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