トラックのホイールナットの締め付けトルクと増し締め|脱輪事故を防ぐ点検とタイヤ交換のポイント
この記事のポイント
- 大型車の車輪の脱落は令和7年度に128件。約半数が11月〜1月に起き、約54%がタイヤを付け替えてから1か月以内、約95%が左後輪でした。
- 防ぐには、規定のトルクで締める(大型車は550〜600N·mが目安。必ず車両の表示で確認)、50〜100km走ったら増し締め、毎日の目視点検、の3つが基本です。
- 錆や伸び、ねじ部の傷みがあるボルト・ナットは交換を。締め付ける前の清掃と、決められた場所への潤滑剤の塗布も欠かせません。
冬用タイヤへの交換が始まるこれからの時期は、大型トラックの車輪の脱落がもっとも増える季節です。車輪が外れると、本人だけでなく歩行者や周りの車を巻き込む大きな事故になりかねません。この記事では、国土交通省と日本自動車工業会の資料をもとに、脱落が起きやすい条件、ホイールナットの締め付けトルクと増し締めのしかた、毎日の点検のポイントをまとめました。
車輪の脱落はいつ・どこで起きているか
国土交通省の集計では、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の大型車(車両総重量8トン以上のトラックなど)の車輪の脱落は128件で、前の年度より8件増えました。そのほとんどが大型トラックです。
| 見えてきた傾向 | 令和7年度の数字 |
|---|---|
| 時期 | 約50%が11月〜1月に発生(晩秋から冬に集中) |
| タイヤを付け替えてからの期間 | 約54%が1か月以内 |
| 外れた車輪の位置 | 約95%が左後輪 |
| 直前の作業 | 約85%がタイヤ交換などの作業のあと |
| 作業した人 | 約56%が車の使用者(運送会社など)自身による作業のあと |
| 地域 | 雪の多い地域(北海道・東北・北陸信越)で多い |
事故を起こした車両を調べた結果では、原因として次のような不備が見つかっています(1件に複数の不備があることもあります)。
- 締め付ける力の管理の不備(規定のトルクで締めていない、締め忘れ)……26%
- 増し締めをしていない……20%
- 部品の劣化・摩耗の確認や清掃の不備……15%
- 潤滑剤の塗り方が正しくない……9%
報告された事例には、使用者が自分で冬用タイヤに交換し、増し締めもしていたのに、27日後(約1,000km走ったあと)に高速道路で左後ろのタイヤ2本が外れた、というものがあります。ボルトやナットのねじに油分がなく、ハブの取り付け面には錆があり、タイヤ交換のときの給脂と錆の除去が足りなかったことが原因と推定されています。増し締めだけでなく、締める前の清掃と潤滑も大切だということがわかります。
ホイールの締め付け方式(JIS方式・ISO方式)
大型トラックのホイールの締め付け方式には、2種類あります。自分の車がどちらかを知っておきましょう。
| 方式 | 特徴 | 後輪(ダブルタイヤ)の締め方 |
|---|---|---|
| JIS方式(球面座) | ナットの当たる面が球面。6穴・8穴 | インナーナットとアウターナットの2つで締める |
| ISO方式(平面座) | ワッシャー付きのナットで平らな面を締める。8穴・10穴 | 一つのナットで2枚のホイールをまとめて締める |
大型トラック・バスでは、排出ガス規制の「ポスト新長期規制」に適合した車から、左右の車輪とも右ねじの「新・ISO方式」になりました。古い車では左側の車輪が左ねじのこともあるので、ボルトに表示されたねじの方向を必ず確かめてから回してください。
また、スチールホイールとアルミホイールを履き替えるときは、それぞれに合うボルト・ナットが必要です(ISO方式はボルトを、JIS方式はナットなどを交換。日野の車はJIS方式でもボルトの交換が必要)。
締め付けトルクと正しい締め方
日本自動車工業会の資料では、いすゞ・日野・三菱ふそう・UDトラックスの大型車で、一つのナットで締める方式の締め付けトルクは550〜600N·mとされています。それ以外の車や方式は、それぞれの指示に従います。規定のトルクは車両に表示されている(タイヤ空気圧のラベルの近くなど)ことが多いので、必ず確認してください。
国土交通省の資料が示す、ホイールを取り付けるときの手順は次のとおりです。
- 清掃する。ホイールの取り付け面・合わせ面・ナットの当たる面、ハブの取り付け面、ボルト・ナットの錆やゴミ、泥を取り除きます。これらの面に塗装を重ねてはいけません(厚い塗膜はナットの緩みやボルトの折損の原因になります)。
- 決められた場所に潤滑剤を薄く塗る。
- JIS方式:ボルト・ナットのねじ部と、ナットの座面(球面座)
- ISO方式:ボルト・ナットのねじ部と、ナットとワッシャーのすき間(ホイールとの当たり面には塗らない)
- 潤滑剤を塗らずに締める「ドライ方式」の車には、油分を塗ってはいけません。
- 対角線の順に、2〜3回に分けて締める。最後はトルクレンチなどで規定のトルクに締めます。インパクトレンチを使うときは締めすぎに注意し、仕上げは必ずトルクレンチで行います。
- 締め忘れがないか確認する。事故の調査では、タイヤ交換のときのナットの締め忘れも見つかっています。
錆びたボルト・ナット、合う部品をお探しします
車検証の写真(または車台番号)と、交換したい箇所を教えてください。ホイールボルト・ナットなど、お使いの車に合う部品をお調べします。
増し締めのしかた
規定のトルクで締めても、走り始めると、ハブやホイール、ナットの接する面の細かい凹凸や塗料が「なじむ」ことで、締め付ける力が少しずつ下がります(初期なじみ)。そのままにすると、ナットが緩む限界を下回ることがあります。
そこで、ホイールを付けてから50〜100kmほど走ったところで、もう一度規定のトルクで締め直します。これが増し締めです。タイヤ交換のあとだけでなく、定期点検や車検でホイールを外したあとも行います。
一つのナットで締める方式(ISO方式)
締める方向にトルクレンチなどで規定のトルクをかけます。新・ISO方式は左の車輪も右ねじです。万一緩めてしまったら、もう一度規定のトルクで締めます。
インナー・アウターの2つのナットで締める方式(JIS方式のダブルタイヤ)
- ボルトの半分(1つおき)のアウターナットをいったん緩めます(残りのアウターナットは緩めない)。
- 緩めたところのインナーナットを、規定のトルクで締めます。
- アウターナットのねじ部と座面に潤滑剤を薄く塗り、規定のトルクで締めます。
- 残りの半分のボルトも、同じ手順で行います。
3か月ごとの定期点検の「ホイールナットの緩み点検」も、この増し締めの方法で行います。増し締めをしたら、タイヤ交換と同じように整備の記録に残しておきましょう。何度もナットが緩むようなら、ホイールやハブに異常があるかもしれません。ホイールを外して点検してください。
毎日の点検で見るところ
車輪が外れる前には、必ず何かの兆しがあります。国土交通省は、1日1回、運行の前にホイールボルト・ナットを目で見て、さわって点検するよう呼びかけています。左後輪は特に念入りに見てください。
- ナットがなくなっていないか、ボルトが折れていないか
- ホイールやボルト・ナットのまわりに、錆の汁が流れた跡がないか(緩みのサインです)
- ナットから出ているボルトの長さがそろっているか
- ホイールにひびや傷がないか
- 点検ハンマーでナットをたたいたとき、指に伝わる振動や音がほかのナットと違わないか
おかしいところを見つけたら、すぐに整備工場へ相談してください。
ボルト・ナットを交換すべきとき
日本自動車工業会の資料では、ホイールボルト・ナットに次のような状態があれば、交換するよう案内しています。
- 著しい錆がある(規定のトルクで締めても十分な力で締め付けられない)
- ひびや傷がある、ボルトが伸びている
- ねじ部につぶれ・やせ・かじりがあり、ナットがスムーズに回らない
- ISO方式で、ナットのワッシャーがスムーズに回らない
交換するときはボルトとナットをセットで。ボルトが1本でも折れていた場合は、その車輪のボルトとナットをすべて交換します。部品は、整備のマニュアルやパーツリストで車に合う正しいものを選んでください。ホイールそのものも、取り付け面の錆や段付きの摩耗、ボルト穴のまわりのひびがあれば、緩みの原因になります。
トラックヒーローを運営する小林商会は、バス・トラック部品の専門商社です。品番がわからなくても、車検証の写真(または車台番号)があれば、お使いの車に合うホイールボルト・ナットやハブまわりの部品をお調べします。
参考にした資料
- 国土交通省「令和7年度 大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について」(令和8年9月) https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/002022981.pdf
- 国土交通省・日本自動車工業会ほか「大型車をご使用の皆様へ 車輪脱落事故防止のお願い」 https://www.mlit.go.jp/common/001101780.pdf
- 日本自動車工業会・大型車メーカー4社「ホイールやホイールボルト/ナットの錆に注意!」「ホイール脱着後は増し締めを確実に!」 https://nikkenren.com/news/pdf/oshirase/1672/234.pdf
よくある質問
- Q. 大型トラックのホイールナットの締め付けトルクはいくつですか?
- A. 日本自動車工業会の資料では、いすゞ・日野・三菱ふそう・UDトラックスの大型車で、一つのナットで締める方式(ISO方式)の場合550〜600N·mとされています。ただし車種や方式によって違うため、車両に貼られた表示(タイヤ空気圧のラベルの近くなど)や取扱説明書で必ず確認してください。
- Q. 増し締めはいつ行えばよいですか?
- A. タイヤ(ホイール)を付けたあと、50〜100kmほど走ったところで行います。締めた直後は部品どうしがなじんで締め付ける力が下がるためです。タイヤ交換のあとだけでなく、定期点検や車検でホイールを外したあとも必要です。
- Q. 増し締めはインパクトレンチでしてもよいですか?
- A. インパクトレンチだけでは締め付けの強さを管理できず、締めすぎや締め不足になります。国土交通省の資料でも、最後はトルクレンチなどを使って規定のトルクで締めるよう案内しています。
- Q. なぜ左後輪の脱落が多いのですか?
- A. 国土交通省の集計では、脱落した車輪の約95%が左後輪です。点検のときは、左後輪のナットの緩みやボルトの錆を特に念入りに見てください。
- Q. ボルトやナットに錆があっても使えますか?
- A. 著しい錆があると、規定のトルクで締めても十分な力で締め付けられません。日本自動車工業会の資料では、錆のひどいボルトやナットは使わず、交換するよう案内しています。交換するときはボルトとナットをセットで、ボルトが折れていた場合はその車輪のボルトとナットをすべて交換します。
ホイールボルト・ナット、ハブの部品もお探しします
錆や伸び、ねじ部の傷みで交換が必要なボルト・ナットなど、車検証の写真(または車台番号)と箇所を教えていただければ、お使いの車に合う部品をお調べしてご連絡します。
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